お弁当のおかずとして、ハンバーガーの具材として一定の人気を誇る『白身魚のフライ』。
のり弁の上にドーンと鎮座する光景も定番で、主役はのりではなくもはや白身魚だろうという声も聞こえてきそうな『白身魚のフライ』だが、その中身についてはあまり知られていません。
そもそも、「白身魚」と一言でいってもたくさんの種類の白身魚がいます。それを油で揚げたものをひとくくりにして『白身魚のフライ』と表現していますが、一体私たちが普段から食べている『白身魚のフライ』とは何の魚のフライなのでしょうか?
「白身魚」の定義ってなんだろう
『白身魚のフライ』の中身について考える前に、まず「白身魚」とはどんな魚なのか確認してみます。
魚を分類する際に「赤身魚」「白身魚」という分け方をしますが、それは身の色をもとに分ける分類方法です。
「色素タンパク質が多く含まれているかどうかで区別され、100gあたり10mg以上あれば赤身魚、なければ白身魚」です。
日本水産学会「白身の魚と赤身の魚」より(1976年)
色素タンパク質というのは、色のついたタンパク質のことでこの量の違いによりダイレクトに身の色が違って見えるということなんですね。
これらの色素タンパク質の量の違いから、魚の行動(餌の取り方など)が大きく変わってきます。
赤身魚の特徴
酸素を運んだり取っておく役目があるタンパク質が多く、遅筋が発達しているため持久力があるため常に泳いでいる魚が多いのが赤身の魚です。
また、血の気がおおいので火を入れると固くなるというポイントは料理をするうえで忘れてはいけないポイントになるかと思います。
身は白っぽく見えても血合いがある魚は赤身魚であることが多いです。
赤身の魚の代表例
マグロ、カツオ、サバ、アジ、イワシ、サンマなど
白身魚の特徴
白身魚は赤身魚に比べて速筋が発達していることが多く、長く泳ぐことは苦手で普段は身を潜めながら瞬発力を生かした餌の取り方をします。
また、アンコウやヒラメのように待ち伏せをしたり、フグやハリセンボンのように毒やとげで身を守ることが出来るような進化を遂げたものもいます。
火を入れるとホロホロっとして食べやすいため焼き魚にしたり、煮崩れしやすいことを生かして練り物などに加工したりします。
以外なことに鮭の身は赤いですが、色素タンパクではなくアスタキサンチンの色で、オキアミなどの餌を食べることで身が赤い色になります。
白身魚の代表例
マダイ、ホッケ、アナゴ、スズキ、タラ、カレイ、ヒラメ、鮭など
『白身魚』のフライの正体はこいつだった!
上記で分類される”白身魚”を油で揚げれば『白身魚のフライ』であることは間違いないが、今回のテーマにしている『白身魚のフライ』とは、のり弁の上に鎮座していたり、ハンバーガーの具材になったりしているあの『白身魚のフライ』の中身についてです。
私たちが知っているあの『白身魚のフライ』の中に使われているのは、【メルルーサ】という名前の魚。
ニュージーランドやアフリカなどに近い太平洋に分布している魚で、深海に生息するサイズの大きな魚です。
タラ目の魚なので、スーパーにも並ぶスケトウダラに近いのかなといった印象です。
この【メルルーサ】が底引き網漁にて大量に捕獲され、冷凍されて日本にやってきては、衣をつけられて油にダイブするというわけです。
日本に入ってくるのは、チリ産やアルゼンチン産と表記されているものが多いです。
魚体が大きく、たくさん獲れることから安価で手に入るため白身魚のフライにはこの魚が使われることが多いようです。また、捕獲後冷凍され船で一度に大量に運ばれてくるため日本では刺身などの生魚として見かけることがないのも頷けます。
他の白身魚で『白身魚のフライ』を作るとどんな味がするだろう
まず初めに、こうした大量につくられ消費される『白身魚のフライ』という立ち位置上、おいしさもそうですが価格面が非常に重要なので総合点では【メルルーサ】がNo.1であることは揺るぎません。
そこについては認めつつ、他の白身魚のフライを味わってみようという感じで揚げてみました。
あくまで個人的な完成ですが、こんな感じに仕上がりますのでみなさんも是非試してみてはいかがでしょうか?
マダイ
今回試した中でNo.1の高級魚であるマダイ。
口に入れて歯に少しばかりの力を入れると、ホロホロと崩れていきます。繊維が明らかに細かく味が繊細。料亭などで出てくるような一品料理のような味わいでした。
カレイ
今回使用したのはアブラカレイ。他の白身魚と比べても名前に恥じない脂の乗りでとてもジューシーに仕上がった。身はしっとり、衣はガリっといただける一品。食べ盛りの男子高校生向けな印象を受ける味わいです。
サメ
サメは、私の住む福島ではスーパーにもよく並んでいる魚で、普段は煮つけとしていただくことが多い。フライにすると身が締まっているため、お肉っぽさを感じられた。カツに近い味わいで満足感が高い一品でした。
タラ
時期的なものもあり、冬の鍋の定番スケトウダラを使用。タラを使った『白身魚のフライ』はこれまでも食べる機会があり、最もメルルーサの『白身魚のフライ』に近いものに仕上がる。それだけにこの味の差をコストの安いメルルーサで再現できるならそちらでいいという結論になるのも頷ける。
スズキ
個人的に一番のおすすめがこちら。ソースなど濃い味の調味料を使用せず、塩で味わっていただきたい一品。歯ごたえもしっかり残り、食べものとしての完成度が非常に高いと感じた。
メルルーサで作る『白身魚のフライ』のコストがどのくらいのものなのか私はわからないが、私だけでなく日本中の人がこの【メルルーサ】の『白身魚のフライ』を食べて育ってきたのは間違いないと思います。
今回、試してみて分かったことですが、同じ白身魚でもそれぞれ違った味わいになるので、『白身魚のフライ』ではなくそれぞれ『○○のフライ』と分けて考えていけたらいいなと思いました。
いつもありがとう!
『メルルーサのフライ』!