ご家庭でお刺身を食べようと思うとき、魚を一尾丸々と仕入れるというより、スーパーなどでサクを買ってきて切りつけるというパターンが多いのではないでしょうか?
※サク=柵(短冊の形に切られた状態の魚。魚屋さんはもちろんスーパーでも手に入る)
料理が好きな私でも、さすがにマグロなどの大きな魚を一尾丸々買うことはありません。サクで買って切りつけます。
今回は、そんなサクをお刺身にするときの最低限覚えておきたい基本的な切りつけを解説していきます!
知ってる?刺身を切りつける際の包丁の動かし方
「魚を引く」という言葉もあるように、魚を切りつける時の包丁の動かし方は、奥から手前にすーっと引きながら1ストロークで切ります。
お刺身の切りつけは見た目の美しさはもちろん、舌触りなど食べたときの味にも影響してくる非常に重要なポイント。
他の料理以上に、素材を”切る”という工程が持つウエイトが圧倒的に重いのです。
また、何度も身に触れることは鮮度が落ちる上、身に負担もかかるため(ボロボロになる)よくありません。
よく見かけるのが、切れない包丁でのこぎりのように前後に動かしながら切るという切り方。
この切り方は絶対にNGです。
身がつぶれて、刺身の見た目も食感も悪くなってしまいます。
包丁を引くときは、脇をしめて肘の角度を一定に保ちながら肩を支点に後ろに引いて動かします。
その時、包丁の根本から刃先まで全てを使うイメージで引いていきます。
包丁の長さに応じて、1ストロークで切れる強さで引くというのがポイントになります。
そのため、刺身を引くための柳刃や蛸ひきは、刃が長い物が多いのです。
まずはこれをマスター!〜刺身の基本的な引き方〜
刺身の引き方は、魚によってさまざまあり、魚特有の引き方も存在します。
そのすべてを家庭で行うことはまずないでしょう。
今回は引き方の基本ともいえる多くの魚をカバーできる2種類の引き方を紹介します。
平造り
赤身から白身まで多くの魚に対応ができる引き方でもっとも基本的な引き方とも言えます。
刺身の食感を楽しめるよう、厚めに切るのがポイント。
スーパーで売られているお刺身をイメージしてもらえると間違いないかと思います。
しかし、「まっすぐ切るだけ」と言っても、サクの置き方、包丁の向きなど実は考えなければいけないポイントがたくさんあります。
サクの置き方
まな板に魚を置くところから、既に勝負は始まっています。
まず、平造りに限ったことではありませんが、奥が高くなるように置くことが基本です。
平な柵の場合はどちらでも構いませんが、三角形の形をしたサクの場合、“奥が高く”を忘れずに。
そしてサクには目(筋や繊維)があります。
平造りでの場合は、目の向きが右肩上りになるようにまな板に置きます。
その際、手前が高くなってしまう場合は、裏返して置いてみましょう!
※皮目がある場合などは、その限りではありません。
引き方
目が右肩上りの向きになるよう置いたサクを目の向きに垂直になるように右側から包丁を入れていきます。
そうすることで、筋をしっかり断ち切ることができるため口当たりがよく、切った際に身が崩れてしまうことを防ぐこともできます。
包丁を入れる際は、根本から刃先まで全てを使い1ストロークで一気に引きます。
切れた身は包丁の右側面に付いた状態になるのでそのまま一定距離右へ離し、まな板に押し付けるように刃側へ包丁をスライドさせながら包丁から身を離します。
こうすることで、角が立ち見た目・食感ともに良い刺身ができます。
白身魚の場合は、目の方向は気にしない
白身魚を平造りに切りつける場合、まな板に置く向きに迷う方も多いかもしれません。
「目の向きが右肩上りになるように」と前述していますが、これはマグロなど大きな赤身の魚の場合を想定しています。
※おうちでサクを切りつける場合、もっとも頻度が高そうなので
白身の魚の場合、比較的小さいためサク取りした際、魚の形そのままの場合がほとんどです。
魚の目は本来「くの字」に入っているため、そのままの形で切りつけのまな板に上がります。
また、白身の魚は身がしっかりしていることが多く、部分的に目の向きと平行に包丁が入っても身が崩れにくいのです。
魚の形がそのままサクに反映されるため、綺麗な長方形になりづらいので切り進めていくときは、1枚の形ができるだけ同じサイズになるように、包丁を入れる角度を変えながら切り進めていきましょう!
そぎ造り
平造りと比べて薄く、断面を広く取ることができる切りつけ方です。
身が締まっていて薄く切った方が食べやすいと思われる際に使われます。
また断面を広く取れるので、お寿司のネタや味を馴染ませたいカルパッチョや漬けにも向いていています。
サクの置き方
そぎ造りの場合、サクの左側から切り進めていきます。
そのため、真っ直ぐサクを置いてしまうと、どうしても包丁を入れていく際に窮屈になってしまいます。
なので、サクを置く際に右斜め上になるように傾けて置き、包丁を真っ直ぐ引けるようにします。
皮目は下にして置くことで、引っ掛かりが少なくなる他、角が立ちやすく仕上がりが綺麗になります。
包丁を引く方向が平造りと逆なので、赤身の場合目の向きも逆に置きます。
右肩下がりの向きですね。
この際、奥が高くなるようにして置くのは変わりません。
引き方
そぎ造りの場合は、サクの左側から切っていきます。
包丁をしっかり寝かせて、薄く削ぐように切ることから「そぎ造り」と呼ばれます。
この時、サクを押さえている左手で包丁との距離を感じながら切るのがポイントです。
魚の身の摩擦を感じながら、距離感を一定に保つことで厚さが均一になり見た目も食感も良く仕上がります。
そして、もう1つのポイントは、引き終わりです。
包丁がまな板と接する部分でしっかり包丁を起こして角を立てるように切ります。
こうすることで、美しいそぎ造りが完成します。
引き終わった身は、左手で剥がすようにサクから離し、左側に重な寝るように置いていくと、お造りにした際に綺麗に盛り付けることができます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、基本的なお刺身の引き方について解説していきました。
「平造り」と「そぎ造り」の2種類ができれば、ほとんどの魚を引くことができます。
おうちで魚を捌くということに抵抗がある方でも、サクで買ってきたものを自分で切りつけて食べるだけでも美味しさは格段に違うはずです。
「賞味期限」=美味しく食べれる期限。
と定義するのであれば、
鮮度が命の刺身に置いて、切りつけられた状態で売られているスーパーのパック詰めのお刺身は既に賞味期限切れと言っても過言ではないと考えています。
ちょっとした一手間で格段に美味しいお魚が食べられるのであれば、この一手間を惜しむ理由がありません。
皆さんもぜひ、この記事を参考にしておうちでお魚を引いてみてください!
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